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設計スタンス

ここではあなたの家づくりをお手伝いする設計士がどのような姿勢で設計に取り組んでいるのか、その一部をご紹介します


スタンスその1「設計調書をとる」

設計調書なんていうと、かなりお堅いイメージをもたれるかも知れませんが、要するに オーダーメイドで服をつくるときの採寸 にあたります。

その人にピッタリの服をつくるのと同じように、その家族にぴったりとあう住まいをつくるのが設計士の仕事です。

そのためには、オーダメイドの服をつくるときに、首まわりや胸まわりウェスト、手の長さを計るのとおなじように、住まい手の要望をしっかり把握しておくことが大切です。

どういう住まいを建てたいのか、

どのように住みたいのか 、

家族の一日の行動パターン、

暮らしぶり等々、

それらを十分お聞きしてこそ設計士はその能力を存分に発揮することができます。

と、いうことで家の設計の第一歩は設計カードなるものに様々な要件を書き込んでもらうことから始まります。

※当ホームページでは、「かんたん設計、かんたん見積りサービス登録フォーム」がここで言う設計調書にあたります。



スタンスその2「家族の居場所をつくる」


家族の共有空間であるLDK空間には、家族の人数分だけの居場所を確保します。

ダイニングテーブルでお父さんとお母さんが楽しいそうに話していて、お姉ちゃんはソファーで寝転んでスマホいじり。で僕はどこに居ようか、となったら可哀そうですよね。

そこで、LDK空間には必ず家族人数分の居場所があることに配慮して設計します。

それはダイニングテーブルであったり、造作机があるワークコーナーだったり、あるいは寝転んでくつろげる畳ベンチだったりします。



スタンスその3「敷地環境を読み込む」

とうぜん100軒の家が建てば、100の土地が存在します。

その土地の持つ環境は一軒一軒ちがいます。

100人の人がいれば100の性格があるのと同じです(あるパターンというのはありますが)。

その土地がもつ固有の性格を読み込んでいくわけですが、どうするかといえば、

まずその土地に立ってハナからゆっくり空気を吸い込みます。

そして目をとじます。

耳に聞こえる音と肌にふれる空気の感じを交互に観察します。

そしてその印象をノートに書きとめておきます。

そのあとに様々な角度からその土地をながめ、日のあたりかた、眺望景色、風の流れかた、まわりの家の様子を観察します。

この情報も敷地図なんかに書きとめて、設計の下書きをするときの資料とします。

最後にその土地の真ん中あたりに立ち、パチパチ360度分の写真を撮っておわりです(これは、となりの家の窓とかちあったり、となりの家のトイレや風呂の窓の前にリビングの窓がきてしまったりすることがないようにするための資料としてもとても便利)。


スタンスその4「家の中に回遊性を持ち込む」

聞きなれない言葉なのでイメージしにくいかもしれませんが、字のとおり、まわってあそぶ性質のことです。

なんでも動物にはたいがいこの習性があるということで、イルカなんかがグルグルまわってあそんでいたり、犬なんかはよく自分の尾っぽを追いかけまわしてグルグルやっていたりするでしょ、ああいうのを回遊性と言うのだそうです。

で、人間の子供だともっとはっきりわかりますが、よく家の中をはしゃいでグルグルかけまわって喜んでいるでしょ。

大人になったらあまりやりませんが、

要するに、家の中にグルグルまわれる場所をつくっておくということです。

こっちのドアからはいってあっちのドアから抜け廊下をとおって、ふたたびこっちのドアからはいって、というような具合です。

こうすることで、家の中に楽しさが生まれるのです。特に子供は大喜び。


スタンスその5「通風経路は必ず確保する」

これはけっこう大事なことです。と同時によく見落とされがちなことでもあります。

「家のつくりようは夏をむねとすべし」と言ったのは兼好法師ですが、夏をむねとしたときの大切な要素が開口部からの通風です。

できれば南北通風が基本です。

だいたい日本の夏は、南ないし南東から風がふくので、南北通風が適しているのです。

どうしても暑いときはエアコンでもいれますが、「今日はきのうより涼しいし、夜風ですごそうかしら」となったときに威力を発揮するのが、この南北通風です。

これを設計時にやっておくのとやらないのとでは大違いです。自然の風の有効利用ですから、エアコンとちがって電気代はかかりませんので、家計にも考慮した設計ということになります。


スタンスその6「収納は要所、要所にとる」

ここで威力を発揮するのが、スタンスその1で紹介した設計調書です。

設計調書のなかには、ご家族の1日の動きを書き込んでもらう項目があるのですが、これをもとにご家族の動きをシュミレートするのです。

ハタからみたら1/100のスケールの平面図をジィーッとみているだけにみえますが、そのとき設計士は頭の中でこんなことをやっているのです。

朝6時、奥さんが目をさました。

眠気まなこに床から起き上がり寝室から出る。

トイレで用をたし洗面所に行き顔をあらい、タオルで顔を拭くと、そのまま家族の朝食を用意するため階段を上がって台所へといく。

冷蔵庫から食材を出すとおもむろに流しで食材を洗い、調理台で調理をはじめる、、、、

(ウ~ンッ、確かここの奥さん趣味は料理だと書いてあったなぁ~。きっと調味料も色々と使いこなすに違いない。作業のしやすいキッチンのここらあたりに調味料棚をもうけておこう。)

----シュミレートをすこしはしょります----

この家には、上が4才、下が2才の子供がいる。

午後2時。子供たちがリビングでオモチャを床いっぱいに広げて遊びはじめる。子供の友達も来てとても賑やか、、、、

(ウ~ンッ、このオモチャは いったいどこから出し、どこにしまうのか?こんないっぱい!オモチャの整理がしやすいようにリビングのここらあたりに物入れ棚がいるな~。)と、こんな具合です。

これを24時間、家族全員の動きを追うことにより、必要な収納量を必要な場所に確保していきます。


スタンスその7「端から端を見通せる場所をつくる」

この手法はおもに、家族団らんの中心となるリビング空間でつかいます。

今の住宅の規模は、想定家族が4人として20坪~30坪前後ですから、よほど設計時点で気をつけていないと、各部屋(個室や寝室その他水まわり空間)に面積をくわれてしまい、とってもチンチクリンなリビングになってしまう、ということがよくおこります。

家族全員そろって、ひとときをすごすのがリビングを中心とした空間であってもです。

そこでリビングを中心とした空間である台所まわりもふくめ、対角線上に見わたせるよう設計的に配慮するのです。

場合によっては、もう一部屋(例えばタタミコーナーとか和室とか)をリビングにくっつけてしまうと、さらに対角線に見わたせる空間となり、より広々ゆったりした空間として感じられます。

視覚心理を利用した単純なテクニックですが、効果は抜群。

きっとそこにこられたお客さんは広々と見わたせるリビングをみて 「本当にこの家○○坪の家なのですか!?」とおどろかれることうけあいです。

もちろんそこに住む家族も気持ちよいはず。


スタンスその7「リビングはもっとも広い場所にする」

先ほどの話とかさなりますが、家族全員がそろって、ひとときをすごす場所がリビングを中心とした空間です。

ところであまり知られていない事実ですが(お子さんが成人をむかえられた方はご存知だとおもいます。経験的に。)、子供は勉強するとき、たいがいお母さんのいるリビングかダイニングテーブルでします。

だいたい自分の部屋で勉強するようになるのは高校受験か、あるいは大学受験のときくらいからです。

それまではズゥ~ッとリビングかダイニングテーブルを陣取って勉強しています。個室にこもって勉強することは、まずありません。

それ以外でも、ゲームをパチパチしたり、パソコンをしてみたり、音楽をきいたり、マンがを読んだりといったことも、リビングを中心とした場所でやります。

つまり、ここが家のなかで一番面積を必要とする部屋なのは、もうおわかりですね。