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誌上内覧会

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誌上内覧会実施の経緯

本来、内覧会は現地でやるのが普通で私も当初はそのつもりでいたのですが、新たなお客さんの墨付けと刻み作業が重なってしまい(設計見積もり~棟上げの準備までは墨付け、刻み加工も含め私一人が通しでやりあげます)、今回誌上内覧会でご紹介する物件のお施主様に了解を得てホームページ上で内覧会を実施する運びとなりました。

「内覧会ならせいぜい土曜、日曜の2日間の開催なのだから、時間調整できなかったのか?」という意見もあるかも知れませんが、墨付け刻み作業にはいるとかなりの集中力と精神力、体力、そして集中力を持続させる耐久力が要求されます。

また家の構造にかかわる大切な作業ですし、現地内覧会に設計担当した私が居ないのもなんですので誌上内覧会という形でご紹介することにしました。

弊社加工工場/墨付け~荷積みまで


新たなお客さんの墨付け刻み材(誌上内覧会の物件ではありません)が自社工場に搬入されたところ。
ちょっと見づらいですがフォークリフトの後ろに積まれた材料も同物件の構造材で主に梁組みに使われる材料です。
この物件は延べ坪36坪でしたが梁材だけで90本程使いました。 ここには写っていませんが中には6メートルを超える梁材もあります。

土台組みの墨付けが終わり加工ラインの上に乗せられたところ。
番付けと言い建前時、現場でスムースに組み立てる為の符番と柱のホゾ穴を掘る位置や加工形状が印されています。
番付けは横軸に「い、ろ、は、に、ほ、へ、と・・・」の表記を使い、縦軸に「一、二、三、四、五・・・」の表記を使います。現場では「い通りの一番から四番」とか「三番通りのほからと」などと言ったりします。

材料に墨付けする前には一本一本その材の性質を読み込んでいきます。木の癖を読むと言ったりしますが、私の場合は木の反り勝手を読むと言っています。
木は一本一本性格が異なりますので、年輪の構成具合や色味、節の状態などを観察し性格(反り勝手)を読み込んでから使う場所を決めていきます。
例えば、年輪構成が比較的緻密で赤身(木の赤っぽい部分)が多く反り勝手(木の背と腹とも呼ばれています)が少し強い梁材は構造的にも比較的強度があると見ますので、家の中でも上からの荷重が大きくかかるところに使います。
柱の場合には反り勝手だけではなく元と末と言って木が山に生えていた時の根元方向と樹冠方向を見極め、立木と同じ状態になるように使います。柱の場合にはそのほかにも「日表」、「日裏」と言って太陽がどちらにあたっていたか読み込み、山の南面で南向きに立っていた木は家の南面に南に向いていたほうを南向きにして使います。

梁材と柱の墨付けが終わり材料が積み上げられたところ。
家の坪数によっても違いますが、この家の場合36坪で土台~梁組、柱まで墨付けだけで2週間ちょいかかりました。墨付けする前には削り作業もありますので、90本の梁材と約100本の柱材を削るのに4日ほど要しましたので、ここまで約3週間ほどかかったことになります。
墨付けの後は刻み加工に入りますが、この家はオール真壁(柱も梁も化粧仕上げ)の仕様でしたので刻み加工たげで1ヶ月ちょい要しました。

現場での棟上げの為にトラックに荷積みされたところ。
トラックの後ろに飛び出している材料はこの家に使われる材料のなかでは一番長い材料で、化粧登り梁という部材です。この数日間は雨が降ったり晴れたりで天候が不安定でしたので、屋根のかかった工場内に止められています。

誌上内覧会 建物基本情報

建物タイプ  
無垢の木の家(柱、梁といった主要構造部材に国産の杉材を使用しています。土台は桧の4寸角材になっています。)

床面積  
1階床面積22.5坪/2階床面積12坪/延べ床面積34.5坪+ロフト床面積4.5坪/2階バルコニー1.5坪

建物込み込み総体金額  
1580万円(消費税込み)(無垢の木の家標準仕様の総体金額、駐車場工事は含まれていませ

平面図

誌上内覧会へご案内

1・南東側からの外観
駐車場の横の私道をお借りして南東側から見たところです。

一段下がった屋根の下(下屋根といいます)はここから見るとダイニングとキッチンにあたり、屋根勾配をそのまま活かした吹き抜け空間になっています。

下屋根の一番奥側には洗面と浴室が配置してあります。

浴室はユニットバスですし洗面所の上が吹き抜けているのも、もったいないと思ったので浴室と洗面所の上にはちょとした隠れ家的スペースを設けてあります。
浴室、洗面所上部の隠れ家的スペース/こんな感じのスペースです          
2・玄関を入ったところ
玄関から畳敷き間の引き戸を開けて奥まで見通したところです。

左に少しだけ見える建具の向こうにはキッチンとダイニングがあり、一番手前右側の建具を入ると洗面所があります。

ここから見ても分かるのではないかと思いますが、左に少しだけ見える建具からキッチンダイニングを抜け広間を通り抜け畳敷き間に入り、真正面に見える畳敷き間の引き戸を抜けると再びこの場所に戻ります。このようにグルリと廻れる動線のことを回遊動線と言いますが、家のなかに回遊動線があるとかなり家の使い勝手がよくなります。(1階平面図を見るともう1ヶ所回遊動線があることに気づくと思います。)

右上のほうに見える木製格子の奥には遊び心で隠れ家スペースが設けてあります。
3・玄関からホールに上がり振り向いたところ
玄関からホールに上がり振り向いたところです。

右手の扉の付いた箱物は収納棚で、高さ1m80cm×幅2m70cmありそこそこの収納量があります。

右手上に見える三角部分には透明アクリル板がはめ込まれていて、上のほうで視線が抜けるので広がりを感じることができます。
4・玄関カマチ部分を見る
玄関から玄関カマチ部分を見たところです。

一般的には玄関カマチと呼ばれる部材が、玄関の床板が終わる先端に取り付くのですが、ローコスト住宅シリーズでは床板の小口見えっぱなし仕上げを標準仕様にしています(床板の切断面に年輪が見えているのが分かるでしょうか?)。無垢の木の家では杉板厚み30㎜厚の小口見えっぱなし仕上げとなっています。

床板の切断面の下に付いている高さ20cmくらいの部材は付けカマチと呼んでいるのですが、一般的な玄関カマチとは違いこの付けカマチの向こうには土台があので、土台と土台の下にある基礎パッキンの隙間をふさぐ役割のほうが強いです。(一般的な玄関カマチの場合は床板と玄関を見切る為の化粧部材の意味合いのほうが強い)

なぜこのような納まりを採用しているかというと、これはこれで(床板小口見えっぱなし仕上げのこと)さほど気にならないし、このほうが大工さんの手間数が減るからです。

トップページの左メニュー住まいづくりスタイルの下にある「私たちの考えるローコスト住宅」の中でも述べていますが、今は材料よりも手間賃のほうがずっと高いのでなるべく職人さんたちの手間数を減らすための一工夫です。 
5・子供の遊び場コーナーあたりから振り返りキッチンを見る
子供の遊び場コーナーあたりから振り返りキッチンを見たところです。

一般的な水平天井はなく化粧登り梁を現しにして吹き抜けた気持ちのいい空間なので、できればキッチンにも垂れ壁などの仕切りを設けないほうがいいと思ったのですが、お施主さんからキッチンにはガスを使いたい要望が出ていたので垂れ壁とシステムキッチンの上にだけ天井が設けられています。(IHにすれば建築基準法上でも天井、垂れ壁なしでOKでした)

キッチンだけ独立した感じになっているのは屋台のイメージを取り入れ設計したためです。システムキッチンを囲う壁、垂れ壁をもう少しデザインしてカウンターの上に赤ちょうちんみたいな物を吊れば屋台みたいになりますが、そこまではしませんでした。
6・キッチンの中から広間のほうを見る
キッチンの中から広間のほうを見たところです。

対面式キッチンなのでダイニングから広間まで見渡すことができます。

天井部分には広間まで化粧梁(化粧梁は構造材も兼ねています)が等間隔で配置され空間全体に豊穣な印象を与えています。
7・ダイニングから広間、畳敷き間のほうを見る
設計するときにいつも心掛けているのですが、居間を設ける階はなるべく対角線に見渡せるようにして、広々感を感じられるようにしています。

収納コーナーの壁があるので畳敷き間の奥まで見渡せませんが、実際にはこの位置に立つと手前は吹き抜けているので広々感は十分でていると思います。
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   こんな感じで吹き抜けています。      
8・広間からキッチン、ダイニングのほうを見る
広間からキッチン、ダイニングのほうを見たところです。

屋内空間に無垢の木をふんだんに使うことにより、なかなかの豊穣さが醸し出されているのが分かるでしょうか?

「これはなかなかのものだ」とは思いませんか?たとえば自然素材系クロスを使って仕上げても、このような豊穣さは出ません。

視覚的にこの空間を構成する主な要素はこの立ち位置で言えば、無垢の床板(杉板)と白い壁、化粧現しの梁(天井部)、奥の化粧登り梁現しの吹き抜け空間、屋台のイメージを採り入れた独立したキッチン、太陽光が直接入ってくる場所と影になる場所という構成で成り立っています。

このようにいっぺんに様々な要素が目の中に飛び込んでくると、豊かな印象を持つことができます。

眺望のよい自然環境の中に立つと気持ちがいいものですがこれは青い空や雲、様々な木々、聴覚的にも川のせせらぎや鳥のさえずり(山の場合)といった様々な要素が目や耳などを通して脳に情報伝達されるためです。

気持ちのいい自然環境のような要素(多様さ)を家の中にもエッセンスとして採り込めば、豊穣さを感じられる空間をつくることができます。
9・広間から収納コーナーのほうを見る
広間から収納コーナーのほうを見たところです。

玄関を入ったところでも解説しましたが、1階にあるもうひとつの回遊動線がこの立ち位置から分かるのではないでしょうか。

畳敷き間の開いている片引き戸と開いている収納コーナーの建具間をグルリと廻ることができます。

右にある平面図を見ると分かりやすいと思いますが、回遊動線があると家の中での動きがスムースになり使い勝手がよくなります。ちょっとやんちゃな小さいお子さんは、たいがいうれしそうに回遊動線間でグルグル走り廻ります。

回遊動線があると暮らしに楽しさもひとつプラスされます。
10・広間から畳敷き間のほうを見る
広間から畳敷き間のほうを見たところです。

本格的な和室のような化粧柱や長押、床の間はなく、床に畳を敷き開口部に障子を建て込んだだけですが、和の感じがしっかりでていると思います。

広間とは、4本引き戸で仕切れば畳敷き間が独立した部屋になります。将来お施主さんのご両親も一緒に住まわれる可能性があるので畳敷き間を設けましたが、家の中に畳を敷いた和の空間があるのはなかなか良いものです。

無垢の木を多用するだけで落ち着ける空間に仕立てることができますが、そこに畳敷きの場所がプラスされると落ち着き度が増します。
11・畳敷き間の押入の中を見る
畳敷き間の押入の中を見たところです。

通常は押入棚の中段には5.5㎜のラワン合板を張ることが多いのですが、無垢の杉板スノコ状張りで仕上げています。

押入は建具を閉めると密閉された状態になりますので、ふとんなどもこもった水気で湿気やすいですし、中段が合板仕上げだとふとんに合板臭が染付きます。

完全ではありませんがこのように無垢の板でスノコ状にしておけば、合板臭も染付きにくくなりますし湿気にくくなります。

上段はこんな感じになっています。(無垢の杉板仕上げになっています)
⑫収納コーナーあたりから階段上がり口をみる
12・収納コーナーあたりから階段上がり口をみる
収納コーナーあたりから階段の上がり口を見たところです。

階段手摺は木の筋違い材を転用したものが取り付けられています。

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手で握った感じはこんな感じで市販されている階段手摺よりがっちりしています。
13・階段を上がって隠れ家的スペースを見る
2階へと階段を上がっていき隠れ家的スペースを見たところです。

ここは洗面所と浴室の上にあたり普通は天井と壁でふさがれてしまうことが多いのですが、隠れ家として有効利用しています。

入り口の高さは約89cmでにじり口のようになっています。
14・隠れ家の中から木製格子を通し玄関ホール、キッチンのほうを見る
隠れ家の中から木製格子の隙間を通し玄関ホール、キッチン、ダイニングのほうを見たところです。

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なかなかおもしろいアングルでしたので撮影してみました。玄関ホールから木製格子を見上げるとこんな感じです。
15・2階個室入り口から個室の中をみる
2階個室の入り口から個室の中を見たところです。

2階は書斎と寝室もこの部屋と同じく水平天井はなく化粧登り梁現しの吹き抜け天井になっています。

1階も同じ配慮で設計してあるのですが、2階の各居室にも南北通風を確保してあります。

この撮影日は8月の初旬で30℃を越える猛暑でしたが、南と北に設けられた窓をあけると心地よい風が吹き抜けていました。

原発問題が世間で騒がれていますが、原発が必要になるのは過剰な電力消費が大きな要因ですので、暑い夏にはエアコンだけに頼らず風があるときは通風で涼をとるのも原発の必要ない世界を構築することに寄与するのではないでしょうか。
16・2階書斎の中からロフトのほうを見上げる
2階書斎の中からロフトのほうを見上げたところです。
ロフトとは3寸角の杉の手摺で軽く仕切ったかたちになっています。
17・2階廊下からロフトへのアプローチ階段を見る
2階の廊下からロフトへ上がるためのアプローチ階段を見たところです。

今回は間取り上うまい具合にロフトへの専用階段を設置することができたのでロフトへのアプローチがよりスムースになっています。

間取りの取り合い上ハシゴ階段になってしまう場合でも垂直ではなく勾配を取りロフトへのアプローチのしやすさを心がけていますが、専用階段のほうが断然使い勝手がよくなります。

この家はロフトのスペースが7畳ほどありますが雛飾りや扇風機などの季節物の入れ替えや、様々な雑多物の保管もより作業がしやすいのではないかと思います。
18・ロフト専用階段を上がってロフトを見通す
ロフト専用階段を上がってロフトを奥まで見たところです。

幅一間×奥行き三間半で7畳ほどの広さが確保されています。

坪単価的にはロフトはおまけの場所で、坪単価×ロフトの坪数分をもらっているところが多いようですが、私の場合は材料台と大工さんに払う手間賃しかいただきませんので、ロフトがあっても家の総体金額がそれほど上がらずに済んでいます。