住まいづくりはなぜ高いのか
家づくりの値段は、材料代と手間賃により大方構成されていますから、家が高くなる理由も材料代+手間賃が割高になるからであることは明白です。
そこで、ここでは、各工程ごとに
①その工程の材料代と手間賃の割合
②家全体の金額に対する各工事費の割合
③ローコストにするための余地と方法等
を解説していきたいと思います。
家づくりの値段は、材料代と手間賃により大方構成されていますから、家が高くなる理由も材料代+手間賃が割高になるからであることは明白です。
そこで、ここでは、各工程ごとに
①その工程の材料代と手間賃の割合
②家全体の金額に対する各工事費の割合
③ローコストにするための余地と方法等
を解説していきたいと思います。
1仮設工事
仮設トイレや、工事中に使用される電気料金、水道料金、足場代等が含まれています。家づくり全体に占める価格の割合は3%程度で、特に価格を押し上げる要素ということはありません。
2基礎工事(標準的ベタ基礎工事として換算)
①材料代と手間賃の割合・・・・材料代40%に対し手間賃60%といったところです。基礎工事費用全体が100万円だとすると、材料代40万円、手間賃60万円ということになります。
②家全体の金額に対する基礎工事費の割合・・・・家づくり全体に占める基礎工事費の割合は6.5%程度です。
③ローコストにするための余地と方法・・・・ 設計的手法ではコストを下げることは出来ない部分です。部分的に自分達でやってしまうというプチセルフビルドの手法が使える余地はありますが、建物を支える土台となる部分ですから、本職の職人さんにおまかせするのがベターかと思います。
3大工工事
①材料代と手間賃の割合・・・・ほぼ100%が手間賃です。会社によっては金物だけ大工さんのほうに用意してもらう場合もありますから、その場合には材料代(金物代)5%に対し手間賃95%といった割合となります。
②家全体の金額に対する大工工事費の割合・・・・家づくり全体に占める大工工事費の割合は10パーセント程度です。
③ローコストにするための余地と方法・・・・設計的におさまり検討して、手間数をへらすことによりかなりコストが下がる部分です。
家のかたちはシンプルな箱型にする、
屋根も複雑な形体にせずシンプルな片流れ屋根、切妻屋根といった単純なかたちを選択する、
大工職人たちが多数あつまる上棟日(10人前後あつまります)には、作業分担を割り振り合理化して、一般的には上棟日以後の作業となる
スジカイ入れや、
出来れば外壁や内部壁の下地組となる間柱も、つけれるだけつけてしまう
等々といったことをするだけでもコストはかなり下がります。
また、
かんたんに出来ちゃうことは建て主みずからやるという手法がつかえる場所が山ほどある工種です。
かなり簡単な作業としては
壁、床の断熱材入れ、
クロス貼りの下地となる石膏ボード張り、
少しだけ難易度があがりますが、床板張り等
といったことは、いざやってみると思いのほか簡単であることがわかります。
以上の設計的手法とプチセルフビルドによるコストダウン手法をつかった場合、25坪くらいの家で換算すると、おおよそ30万円~40万円くらいのコストダウンが実現します。
4建材工事
①材料代と手間賃の割合・・・・こちらは大工工事とは対象的に100%材料代です。土台や梁、桁、柱や通し柱といった構造材、間柱や石膏ボードといった下地材、床板や天井板といった仕上げ材、スジカイ、断熱材、造り付けに使う杉板等々といったものが含まれています。
②家全体の金額に対する建材工事費の割合・・・・家づくり全体に占める建材工事費の割合は27%程度です。
③ローコストにするための余地と方法・・・・建材工事には、
家の骨組みである構造材、
家の断熱性を左右する断熱材、
仕上げ材となる床板や天井板、杉板
等が含まれていますから、コストを下げるというよりは、逆に予算投入して安心、安全な材料選択をしなければならない部分です。
それに、例えば構造材である柱などをケチって105㎜角の柱にしたとしてもコストが下がるのは、120㎜角の柱にくらべたかだか一本あたり数百円です。
25坪くらいの家だと、柱の数は全部あわせて60本くらいですから、家全体でみたとしても3万円~4万円しかコストはさがりません。これは逆に言うと、105㎜角の柱を120㎜角の柱にしてもさほどの単価アップにはならないということです。
5屋根工事
①材料代と手間賃の割合・・・・材料代35%に対し手間賃65%といったところです。
②家全体の金額に対する屋根工事費の割合・・・・家づくり全体に占める屋根工事費の割合は2%程度です。
③ローコストにするための余地と方法・・・・デザイン的に極力シンプルな屋根形体を選択すること。具体的には、切妻屋根か片流れ屋根。屋根葺き材の種類も色々とありますが、コロニアル葺き、ガルバリウム鋼板瓦棒葺きといった形体を選択するのがコスト的にはベストです。
6金属建具
①材料代と手間賃の割合・・・・ほぼ100%材料代ということができます。というのは金属建具を取り付けるのは大工工事に含まれるからです(金属建具は玄関戸も含めて大工さんが取り付けます)。
②家全体の金額に対する金属建具費の割合・・・・家づくり全体に占める金属建具費の割合は8%程度です。
③ローコストにするための余地と方法・・・・暖房がはいっているときの暖かい熱でも、エアコンがはいっているときの冷たい冷気でも、窓から暖気や冷気が一番逃げていきますから、金属建具にはある程度予算投入して断熱性能のあるものを選択することが必要です。予算に余裕があれば、シャッター付きサッシを選択するより断熱雨戸付きサッシを選択するほうが断熱性能的には有利です。
7木製建具(シナ合板フラッシュとして換算)
①材料代と手間賃の割合・・・・材料代30%に対し手間賃70%といったところです。
②家全体の金額に対する木製建具費の割合・・・・家づくり全体に占める木製建具工事費の割合は2%といったところです。
③ローコストにするための余地と方法・・・・巾80センチ×高さ2メーターの開き戸の場合だと、1本あたり3万円ほどになりますから、
建具をつける場所を限定することです。
寝室や脱衣、トイレなどといったところに限定して 、
どこもかしこも建具付きにするとそれだけ金額がふくれあがりまから、暮らしてみてここには必要と感じたらロールスクリーンでまかなうとかすれば単価を抑えることができます
(巾80センチ×高さ2メーターのロールスクリーンの場合、1万円前後で色々な商品が出回っています)。
8外壁工事(サイディング貼りとして換算)
①材料代と手間賃の割合・・・・材料代50%に対し手間賃50%といったところです。
②家全体の金額に対する外壁工事費の割合・・・・家づくり全体に占める外壁工事費の割合は4.7%といったところです。
③ローコストにするための余地と方法・・・・建物のかたちは極力シンプルな箱型とすること
(出っ張り引っ込みが多いとそれだけ職人さんの手間数が増えます)、
サイディングの場合には、使用する種類、色を1種類に限定すること、せいぜい下部と上部の2種類、2色の貼りわけにとどめておくこと。
そうすることで職人さんの作業効率があがります。作業効率があがるということは、作業時間も短縮されるということですから、つまりコストダウンの余地がでてくるということになります。
9左官工事(当社住宅シリーズ仕様にて換算)
①材料代と手間賃の割合・・・・材料代65%に対し手間賃35%です。
②家全体の金額に対する左官工事費の割合・・・・家づくり全体に占める左官工事費の割合は2.5%といったところです。
③ローコストにするための余地と方法・・・・壁(当社では壁の仕上げ材に漆喰を使用しています)は大きな面積となりますから、
安全性の高い仕上げ材であること、
と同時にコストも安いこと、
といった両面から材料選定する必要があります。
また、建て主みずからやるプチセルフビルドの手法もつかえる場所です。
プロの左官屋さんのようにキレイにはいきませんが、素人ならではのプロがやったのでは出ない味わいがでます(塗りムラやデコボコの仕上がり具合がかえってよい味わいをかもし出します)。
プチセルフでやった場合、施工面積にもよりますが10万円前後のコストダウンになります。
10内装工事(当社住宅シリーズ仕様にて換算)
①材料代と手間賃の割合・・・・材料代50%に対し手間賃50%です。
②家全体の金額に対する内装工事費の割合・・・・家づくり全体に占める内装工事費の割合は1.6%といったところです。
③ローコストにするための余地と方法・・・・9の左官工事と同様、壁は全部あわせると大きな面積となりますから、安全性の高い仕上げ材であること、と同時にコストも安いこと、といった両面から材料選定する必要があります。
11住宅設備(当社住宅シリーズ仕様にて換算)
①材料代と手間賃の割合・・・・洗面台は水道屋さんに取り付けてもらいますし、キッチンは大工さんに取り付けてもらいますから、ほぼ100%材料代です。
②家全体の金額に対する住宅設備費の割合・・・・家づくり全体に占める住宅設備費の割合は6.0%といったところです。
この住宅設備費はどのような仕様と値段のものを使用するかによりかなりの金額の差がでる部分です。
かなりの高額商品を採用する場合には、住宅設備費の割合が20%を超えることもあります。
しかし、
食事を作ったり、
後片付けしたり、
手や顔を洗ったり、
歯磨きしたり、
湯船につかってくつろいで、
といった必要性を満たすためには、当社が標準仕様としている商品で充分その必要性を満たします。
ちなみに定価でのはなしをすると、
キッチンは長さ2m55cmとして38万2千8百円、
洗面台は7万9千3百円、
ユニットバスは66万4千円
の物を使用しています。
③ローコストにするための余地と方法・・・・必要性を満たしていることに重点をおき(どの商品も必要は満たしています)、
あまり色々な機能がついている商品を購入しないこと、
また
各メーカー様々な仕様の高額商品を取り揃えていますから、高額商品のものを採用しない、
ということにつきます。(高額商品のものはダメだという意味ではありませんので、念のため)。
12電気工事
①材料代と手間賃の割合・・・・材料代40%に対し手間賃60%といったところです。
②家全体の金額に対する電気工事費の割合・・・・家づくり全体に占める電気工事費の割合は2.0%といったところです。
③ローコストにするための余地と方法・・・・台所手元灯や寝室、個室につかう照明器具をプルスイッチタイプのものにすると、スイッチが要らなくてもすみますからその分コストがさがります。微々たるものですが、細かなとこまで気を抜かないことで、家づくり全体からするとそれなりのコストダウンとなるのです。
13給排水工事
①材料代と手間賃の割合・・・・材料代30%に対し手間賃70%といったところです。
②家全体の金額に対する給排水工事費の割合・・・・家づくり全体に占める給排水工事費の割合は6%といったところです。
③ローコストにするための余地と方法・・・・数年前までは、一人一日あたり4万円以上の手間賃でした
(はっきり言ってこれは高すぎ、ボリすぎです)、
こんな高い人件費を払わされていたのにはちゃんと理由がありまして、というのは、以前は市町村に指定された工事業者でないと水道工事が出来なかったのです。
市役所に認められた指定工事業者の数はかぎられていましたから、いわば悪法にまもられて工事業者も発注者の足元をみた商売をしていたわけですね。
しかし、平成8年に規制緩和の一環として水道法の改正がありまして、水道工事業以外の企業でも自由に参入できるようになったのです。
この法改正の目的は、密閉化された指定工事店だけによる水道工事という慣習に、競争原理をはたらかせ市場の活性化を図るということですから、
平たく言えば 、競争させて値段がおちるようにしちゃったわけですね。
それで法改正があってから10年以上経過した現在では、水道工事が出来る業者もかなり増えて(全国の指定水道工事業者の増加推移は法改正前の3倍以上)、一人一日あたりの手間賃もそれなりに落ちました。
それでもまだ3万円~3万5千円といったところですから、そこそこの技量をそなえていて安くやってくれる業者を探す、ということが今のところオーソドックスな手法である、ということができるでしょうか。