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坪単価表示のからくり

そもそもなぜ坪単価表示なるものがあるのかと言うことですが、

一つは売り手側の理由、

もう一つは買い手側の理由 からです。

そろそろ住まいを購入しようか、となった時どうします? 家づくりのイメージがまだ漫然としている人は、

住宅雑誌を買いあさったり、

インターネットで検索したり、

住宅展示場に行ったりして 情報収集をしますよね。

と同時に、

①家づくり全体にかかる費用を知ろうとします。

そして

②自分達のイメージする家を安く建てたいと思います(買い手側の心理として当たり前の心理です)。

また、売り手側がこの心理を知っているのか、いないのか定かではありませんが(たぶん、本能的には、あるいは無意識的には知っているのだと思います)、

③人には、物事を自分の都合のよいように解釈して受け入れるという心理が働きます。

そして売り手側は①の家づくり全体にかかる費用を知ろうとする買い手心理と②の家を安く建てたいと思う買い手心理に応えるかたちで坪単価表示をするわけです。

ですから、②の買い手側の家を安く建てたいという心理に応えられない、と思い込む工務店や会社は坪単価表示をやりたがりません。

ここまではOK、坪単価表示をしたければすればよいし、したくないところはしなければよいわけです。

しかし、買い手側の①家づくり全体にかかる費用を知ろうとするという心理と、②自分達のイメージする家を安く建てたいと思う心理、に応えるかたちで坪単価表示する会社の多くは(全部ではありません、坪単価表示まで含めて良心的にやっているとこは少数派ですが存在します)、

③の物事を自分の都合のよいように解釈して受け入れる人の心理を活用(もしかすると悪用?)します。

つまり、家づくりに必要な様々な経費をはぶいて安く坪単価表示するわけです。

買い手側は安い坪単価表示をみて

「え~、こんなに安くできちゃうの」

とおもいますから(少なくとも坪単価表示のからくりついての知識がまったくない人は)、計算機なんかを持ち出してきたりして、自分達の希望する家の坪数×売り手側が表示した坪単価表示をパチパチはじき出したりするわけです。

そして、

住宅展示場に行ったり、資料請求したりするうちに、売り手側が広告などで提示した坪単価表示と実際に家づくり全体にかかる費用がだいぶ違うことに気付きます。

そして最終的に家づくり全体にかかる費用を把握した買い手は

「な~んだ、安く建つと思ったのに、結局こんだけの費用がかかるのね」

とガッカリするわけです。

このやり方は決してフェアーなやり方であるとは言えません。安い坪単価表示をして喜ばせておきながら、実際の家づくり全体の費用は提示された坪単価表示とぜんぜん違うわけですから。

と、いうことでここでは当社のモデルプランを題材にして坪単価表示のからくりを、事細かに解説していきたいと思います。

からくりその1「坪単価表示には建物本体価格しか含まれていません」

多くの、坪単価表示を安く設定している住宅会社が好んで明示するこの坪単価なるものには、家づくり全体に必要なその他経費が含まれていません。

この、家づくり全体に必要となるその他経費にはどんな内容が含まれているかと言うと(実際のところ、建物本体価格に含まれない、その他経費は各住宅会社によってかなりのバラツキがありますが、ここでは話をわかり易くするためにそのなかでも比較的その他経費の項目が多い住宅会社のものを例として使います)。

それは、

①地盤調査費、

②仮設工事費、

③屋外電気工事費、

④屋内外給排水工事費、

⑤雨水排水工事費、

⑥残材処理費、

⑦室内照明、

⑧給湯器、

⑨確認申請料、

⑩設計料、

⑪諸経費

といった内容です。

次に、モデルプランもとに、その他経費がどこに含まれているか明示します。

エコハウスモデルプラン 4間×4間+下屋1間×1.5間
床面積25.5坪+ロフト3坪
家いっけん、まる込み価格1450万円(消費税込み)
まる込み価格には、次の内容がすべて含まれています。

工事名内容含む
 ○ 
別途
 ×
仮設工事工事中に使用される電気、水道、仮設トイレや、材料の運搬費、残材処理費等が含まれる ○ 
仮設足場工事中に使用される足場代、足場を覆うシート代が含まれる ○ 
基礎工事基礎工事費用全般、工事中に発生する残土処理費が含まれる ○ 
大工工事大工工事費用全般 ○ 
建材工事土台、柱、梁等といった構造材、間柱、石膏ボードといった下地材等、床板、造り付け部材として使われる杉板、床、壁、屋根の断熱材、耐震用特殊スジカイ等々が含まれる ○ 
屋根工事屋根工事費用全般 ○ 
板金工事たて樋、軒樋の材料と工賃 ○ 
金属建具そとまわりアルミサッシ全般(アルミサッシ本体、ガラス、網戸、玄関戸) ○ 
木製建具内部建具全般 ○ 
外壁工事外壁工事費用全般 ○ 
左官工事内部左官工事費用全般(漆喰美人の施工等) ○ 
内装工事すっぴんクロスの施工等 ○ 
住宅設備ユニットバス、キッチン、洗面台、換気扇、照明器具 ○ 
ソーラー工事ソーラー機能:冬の床暖房、全館暖房、夏の屋根熱気排気機能、採涼機能、屋内温度均一機能(循環機能)、全館換気機能 ○ 
電気工事屋外電気工事、屋内電気工事、電気工事申請料、スイッチ、コンセント、照明器具の取り付け等 ○ 
給排水工事屋外給排水工事、屋内給排水工事、トイレ、洗面台の取り付け等 ○ 
畳工事ほんものたたみの施工(オプション)  ×
ガス工事給湯器、ガス配管工事、給湯リモコン風呂リモコン含む ○ 
その他経費現場管理費用、設計料、建築確認申請料、地盤調査費用等々 ○ 
ハウスクリーニング家の入居前の掃除 ○ 
赤で表示された部分が、一般的な建物本体だけの坪単価表示から別途扱いされている部分です

この別途扱いされている金額の合計は、モデルプランの場合486万円になります。

これを単純計算すると、

1450万円-486万円=964万円となり、建物本体価格だけの坪単価表示をしますと、

964万円÷25.5坪=37万8千円ということになります。つまり、この坪単価表示の手法をつかった場合、

「こんなにこだわった仕様でなんと!坪単価37万8千円です!」となっちゃうわけです。

さらに、吹き抜け面積やロフトの面積まで床面積の部分にカウントしてしまう場合もありますから、同じ手法を使って坪単価表示すると、

ロフト3坪+モデルプラン吹き抜け面積8坪=11坪となり、

これを床面積にカウントしてしまうと、25.5坪+ロフト、吹き抜け面積11坪=36.5坪となり、

建物本体価格表示964万円÷36.5坪=26万4千百10円となります。

つまり、今述べたような手法を全部つかって坪単価表示すると、

「当社は坪単価26万4千円であなたの家づくりをお手伝いします!!」となっちゃうわけです。

このやり方はおかしいとおもいませんか?

あきらかにやり過ぎです。

私だってこんな安い金額でお客さんに提案できたらそりゃぁうれしいですよ。エコハウスモデルプランは、他の住宅シリーズ同様、本物自然素材にこだわって建てる木の家なのですよ。

それが、この26万4千円で出来ちゃったら、このモデルプランだと673万2千円ということになるのですから、

でもね、通常のやり方ではこの金額でやるには無理があるのです。仮にどんなに職人さんの手間賃を下げたって限度というのがあるわけですし、どんなに仕入れ単価を下げたってやはり限度というものはありますから、これから家づくりを考えている人は、こんなアホみたいな坪単価表示におどらされてはいけません。

結局のところ、家づくりで重要になるのは建物総体の金額がいくらになるかということです。

これは、このページで最も重要なテーマですから、もう一度言いますよ。

結局のところ、家づくりで重要になるのは、あてにならない坪単価表示ではなく、建物総体の金額がいくらになるかということです。

ほとんどの人が住宅を購入する場合、銀行でローンを組むわけですから、建物総体の金額が100万でも、200万でも安いほうが、後々のことを考えればいいわけです

(仮に金利3%返済期間30年で3000万円の住宅ローンを組んだ場合、返済しなければならない金額の総計は4550万円となります、30年間で支払う利息分だけで家がもう一軒建てれてしまう金額です)。



からくりその2「建物の坪数が大きくなると坪単価はさがります」

論より証拠。エコハウスモデルプランと全く同じ仕様で、よく安い坪単価表示をしているところが、必ずといってよいほど条件付けしている建て坪数と同じくらいの規模のプランでご説明いたしましょう。

エコハウスモデルプラン4間×5間+下屋2間×1間
床面積38坪+ロフト4.9坪
家いっけん、まる込み価格1800万円(消費税込み)

ここから先は、坪単価を安く表示するための手法は一切使いません。

当社の価格表示の基本システムである、家いっけん、まる込み価格をベースに解説を進めていきます。

エコハウス25.5坪プランの家いっけん、まる込み価格は1450万円でしたから、

1450万円÷25.5坪で坪単価換算すると約56万8千円/坪ということになります。

エコハウス38坪プランの家いっけん、まる込み価格は1800万円ですから、

1800万円÷38坪で坪単価換算すると約47万3千円/坪ということになります。

25.5坪プランと38坪プランの坪単価の差額は約9万5千円で、同じ仕様で坪数が大きくなったことにより坪単価が9万5千円安くなったことになります。

どうして、坪単価は坪数が大きくなると落ちるのかというと、

建物全体に占める金額の中には、坪数が大きくても、小さくても、極端に金額が変わらない工種なり材料がある、

ということと、

工種の金額には差があるけど、坪数で割ると坪単価が安くなる工種があるためです。

今回、題材にあげたモデルプランで金額に極端な差のでなかった工種としては、①仮設工事、②仮設足場、③軒樋、縦樋(板金工事)、④外壁工事、⑤左官工事、⑥住宅設備、⑦電気工事、⑧給排水工事、⑨給湯器、⑩ソーラー工事といった内容です(1工種あたり数千円~数万円の差です)。

以上にあげた工種の合計金額は、約405万円となりますから、

これを25.5坪プランと38坪プランで割るといくらの差があるか分かります。

405万円÷25.5坪=約15万8千8百円、

405万円÷38坪=約10万6千5百円、

ということで、坪数が大きくなった38坪プランのほうが、約5万2千3百円坪単価が落ちていることがわかります。

これにもう一つの、坪数が大きくなると坪単価が落ちる要素である金額が加算されて、さらに坪単価がさがるのです。

ちなみに、今回いちばん坪単価を下げる工種となったのは建材工事で、

25.5坪プランでは建材工事の合計333万円、

38坪プランの建材工事の合計417万円で、

差額が84万円あるのですが、それぞれ坪数で割ると、

333万円÷25.5坪=約13万円、

417万円÷38坪=約11万円で

38坪プランのほうが25.5坪プランにくらべ約2万円ほど坪単価が落ちているのがわかります。

この2つの坪単価が下がる要因が加算されて、坪数が大きくなると坪単価は落ちるのです。


からくりその3「からくりそのものをつかうからくり」

それは、

買い手側の自分達のイメージする家を安く建てたいという心理に、何とか応えようとすると「からくりその1」で述べた手法と「からくりその2」で述べた手法をつかうことが、てっとり早いためです。

これは、一般的な恋愛関係に非常によく似た構図です。

恋する男女は出会いの初め頃、相手に好印象を与えたいと思いますから、あからさまな普段の自分はかくして、顔を、こうナナメになんかにかまえたりして、「おほほホホッ」とやったりします。

そうすることで、あたりさわりのない自分を装い、出来れば相手に好印象を与えようともくろみます。

住宅会社が買い手側にアプローチするときに使う安い坪単価表示も、この恋愛関係のときに使うアプローチとまったく同じです。

つまり平たく言えば、

何としてでも買い手側に好印象を与えて、その後の関係を発展させ契約させたいわけです。

しかし、家づくりの場合には土地購入の金額まで合わせると数千万円の出費となりますから、かかるお金のことから言えば、ママゴトのような恋愛関係のようにはいかないわけです。

買い手側が最終的に求める家の大きさは、よく安い坪単価表示する会社が条件付けする35坪や40坪の家とは限りません。20坪の場合もあるでしょうし、24坪の場合や、30坪の場合もあるでしょう。

夫婦と子供二人という平均的な4人家族の場合、35坪の大きさの家や40坪の大きさの家は、4人が住むには比較的大きな建物となります(尺モジュールで間取り設計した場合は特に)。

あわせて経済性の問題もありますから(家づくりでは大きい金額の銀行ローンを組むことがほとんどです)、25坪前後の建物を選択する買い手は結構多いわけです。

ところが、

25坪の家で坪単価表示すると35坪や40坪の家でやったときと同じような坪単価とはなりませんから(坪数が大きくなると坪単価は下がるのですから、逆に坪数が小さくなると坪単価はあがります)、

安い坪単価表示する会社は、坪数の小さい建物での坪単価表示をやらない(と言うより出来ない)わけです。